飲食店のweb集客は食べログなどのグルメポータルサイトに頼るしかないのか?

公正取引委員会がグルメポータルサイトと飲食店の取引実態に関する調査報告書を発表しました。
どなたも当然のことながらうすうす気づいていたことではあると思いますが、グルメポータルサイトと飲食店の力関係をわかりやすく公表してくれましたね。
飲食店、企業が「web集客」「サイト運営」というものに対しての考え方を改めて考える良い機会になったのではないかと思います。
実は飲食店だけではなく、多くの業界でこのような問題が起きていると感じています。
火中にいる企業はもちろんですが、私たちWEBに関わる人間にとっても学ぶべきことが多い今回のニュース、生きた教材として是非勉強していきましょう。
グルメポータルサイトに上がる不満
公正取引委員会は全国約1,600店の飲食店と1万人の消費者を対象にアンケート調査を実施、グルメポータルサイトに対して、飲食店がどのように感じているのかという現場の声が浮き彫りになりました。
取引関係や契約内容などグルメポータルサイトとの取引上の優劣などを調査結果として公開しています。
【調査結果については公正取引委員会の以下ページをご覧ください】
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/mar/200318-2.pdf
具体的には、
・クーポンを表示しないことにより店舗情報の表示順位が下がるとの説明を受けた。
公正取引委員会 (令和2年3月18日)飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査について
・ある飲食店ポータルサイトから,その飲食店ポータルサイトだけのクーポンや料理コース等の新設を要求され,負担が増大した。
・ある飲食店ポータルサイトから他社のクーポン以上に割引をしないと,掲載できないと言われた。
・通常の割引対応以上の値引きを要求され,結果として利益減につながっている。
など、グルメポータルサイト側の強気な姿勢が見え隠れしていますよね。
でもなぜ飲食店はわざわざグルメポータルサイトに頼った集客をするのでしょうか。
グルメポータルに頼らなければ高い手数料も支払う必要なんてありませんし、また現場を無視した強引な提案も受ける必要なんてありませんよね。
グルメポータルサイトに頼らなければ営業が成り立たないという事実
今回の調査においては1万人の一般消費者からもグルメポータルサイトや飲食店検索についての意見も公表しています。
それによると、
「消費者が飲食店を選ぶ際に参考にするもの」として、グルメポータルサイトを100とした時に、「友人や家族等の口コミ」が49.2、「飲食店独自のWebサイト」が40.6と半数以下という結果となっております。
飲食店側への調査でもグルメポータルサイトの影響力について7割近い飲食店が「非常に大きい」「大きい」、また今後についても「影響力が大きくなっていく」「大きくなっていく」と回答しています。
具体的には、
・自社サイトと比較しても4倍近い売り上げを確保しているため頼らざるを得ない
・新規顧客が一定数集まるため、グルメポータルサイトへの掲載は止められない
・グルメポータルサイトなしでは、自力での経営は難しい
といった声も上がっているほど、飲食店にとってはなくてはならないのがグルメポータルサイトという存在なんですね。こうした理由から多くの飲食店がグルメポータルサイトに頼った集客をしているといったことがわかります。
実は同じようなことはほかの業種でも起こっている
果たしてこうした現象は飲食店だけなのでしょうか。
実は、私がwebディレクターをやっていて、やりにくいな~と感じる業種があります。
もしかしたら多くのWebディレクターが同じような意見を持っているのかもしれません。
それは不動産、ウェディング、旅行、リフォームといった業種です。
わかりますでしょうか?
これらの業界は、いずれも大手がポータルサイトを運営している業界です。
例えば不動産であればSUUMOやアットホーム、HOMESが代表的ですね。
どこでどんな検索をしても、たいてい検索結果の上位はこうしたポータルサイトが独占していますよね。
地元の不動産会社が検索に出てくるということはほぼないでしょうね。
これは飲食店の食べログやぐるなびなんかと同じです。
またウェディングではゼクシィ。リクルート、本当に強いです。
旅行(ホテル・旅館予約)では楽天トラベルやじゃらん、またトリバゴ、一休.comなど数えきれないほどの予約サイトが検索結果に出てきます。
リフォームも同様です、例えば外壁塗装の窓口やヌリカエといった相見積もりポータルサイトが乱立しています。
地方の中小企業が戦いを挑んでも、勝てるわけがない大資本を持っている会社に検索結果を独占されてしまっていることもあり、こうした業界で集客のできるWebサイトを作ってほしいと言われても、webディレクターとして非常に困ってしまいます。
ランチェスター戦略で徹底的に勝てる分野で勝負するといった戦略が必要となるのでしょうが、情報のまとめ方や届け方など、多くのトライ&エラーを実行した結果、初めて何か一つの成功を生み出せるといった感じなのでしょう。
そうしたトライ&エラーを実行できる時間や経費の余裕があればまだ良いとしても、そんなことしている場合ではない中小企業がほとんどです。
だから結局は薄利になっても、食べログやぐるなびといったグルメポータルサイトに頼るしかないのです。
Web集客を握られてしまうことが最大の弱み
ポータルサイトに頼らなければいけない、最大の理由は結局「自社ではweb集客ができない」からなんですよ。
つまり集客を他社に握られてしまっているということですね。
こんな怖いことないですよ。
もし「明日から手数料が倍になります」と言われても、自力でweb集客ができなければ費用を払わざるを得ません。
従業員の給料を払わなければいけないことを考えれば、薄利だったとしても売上を上げなくてはなりませんから、ポータルサイトに頼らざるを得ませんよね。
結局自分でWeb集客できないことが全ての根源で、ここを解決できない限りはまるで奴隷のように首輪で繋がれ、利益を搾取され続けなければいけないわけですよ。
正直な意見を申し上げて、私はポータルサイトの利用は「利益よりも、害が圧倒的に大きい」と考えています。
極端な意見かもしれませんが、ポータルサイトがあることで企業がweb集客についての努力を怠り、現場を知らないポータルサイトの営業マンに「あれやりましょう」「これやりましょう」とポータルサイトで集客できるノウハウだけを詰め込まれ、やめられなくなるわけです。
私の苦い思い出ですが、2018年の忘年会で幹事を任され、あるお店を選定しました。
食べログで3.5を超えるお店でしたが、行ってみたら飲み放題にハイボールや生ビールがない、汚い個室、無愛想な店員と、本当に幹事として申し訳ない思いをしたことがあります。
飲み放題については私の確認ミスだとしても、今の時代ハイボールが付いてないってどういうことよって思いましたよね笑
シミの付いたじゅうたんが敷かれた汚い個室と不愛想な店員による接客は論外ですよね。
でもね、食べログの点数ももちろんですが、掲載されている店構えも料理の写真もめちゃくちゃ綺麗だったんですよ。
たぶん、だまされた人多いと思うんですよね。
それにしたってお店は「ポータルで集客するためには」とアドバイスを受け、素直にやった結果だと思うんです。集客手法を知らないから言うことを聞くしかありませんよね。
正直なところ、自助努力が必要ありませんから企業にとってみれば楽でしょう。
しかし莫大な手数料を取られるうえに、場合によってはユーザーの不信を買う、こんなバカなことないと思うんです。
Webディレクターの立場としても、また企業の立場としても莫大な資本が投下され、制作されたポータルサイトに勝つことは容易ではありません。
SEOや広告にもめちゃくちゃお金を使ってますから、認知度も違います。
しかしSNSの流行やヴェニスアップデートなど地域の中小企業が生き残っていける、web集客の環境は昔に比べると揃っているといっても良いでしょう。
ポータルサイトともうまく付き合いながら、今こそ、各企業がUSP(ユニークセリングプロポジションの略で、企業独自の価値・強みのこと)を見直し、それをどうユーザーに伝えるべきか、どういう手段が自社のビジネスと親和性が高いかなどを検討し、web集客を自社で行う思考を持つようにしていただきたいと感じます。
またwebディレクターの方もご自身のクライアントの業界を俯瞰的に見直してみると良いでしょう。